せとうち島旅★豊島編

June 2014

さて小豆島で2泊した翌朝早く、友人#2も関西へ帰っていき。私はあと一泊一人で残って前から気になっていた豊島(てしま)へ行くことに。

アートで直島が爆発的に有名になった後、次にだんだん名前を聞くようになった豊島。しかも行った人全員が大絶賛している島。

泊まっていた民宿は東の坂手港の近くだったから、そこからバスに乗って小豆島で一番大きな港・土庄港へ。行きに乗ったのは小さな旅客船。ずっと外の席に座っててあっという間の15分で豊島に到着。いいねぇ 離島って感じだねぇ。 て思ってたら、帰りに乗ったのは随分大きなフェリーで30分だった。

さて何はともあれ豊島の唐櫃(からと)港に到着。私以外は観光らしい雰囲気の男性二人がいただけで、後はいかにも小豆島へお買い物へ行った帰りっぽい大荷物の島の人たちばかり。港といっても小さな小屋のような切符売り場と芸術祭の時に作られたらしい竹の小屋があるだけ。地図をもらいたかったけど誰もいなかったので、とりあえず向かいの道の前にあった「電動自転車」と書いた旗を見つけたので近寄ってみる。というのは、豊島に行った人みんなから自転車を借りるように、しかも電動自転車を強く勧められていたので、私も電動にする気マンマンだった。 でも店の前に書いてある値段は4時間1000円。。電動って思ったより高いのね。。

そこで道の先の方にある別の自転車屋も見に行って料金を比べてみることにする。でもそこはママチャリ、しかもギアなししかない。気の良さそうなおっちゃんがいたので、どれくらい坂道キツイですか?と聞くと、唐櫃から豊島美術館~島キッチンのあるところあたりまでがずっと上り坂で、その辺りが島で一番高いところになるから後は下るだけだから、初めの坂をがんばれば大丈夫、とのこと。その上り坂は15分くらいという。 それなら山育ちなんで、楽勝です!とガッツポーズを決めて、ママチャリにすること決定。一時間100円だけど若干おまけつき。

さてじゃあ張り切って坂道を!と思ったらおっちゃん、「心臓は行くんか?」と。 ちなみに私、豊島に行きたいって思ってきたものの、アートのことで知ってたのは豊島美術館と島キッチン(しかも島キッチンがアートの一部で作られたカフェってことも直前まで知らなかった)だけで、他のことは全く調べてなかった。

というのを一瞬で察したおっちゃんが,簡単に”心臓”とその途中にちょこちょこある小さなアートのことを説明してくれた。ありがとう。。 じゃあ近くにあるみたいなんで、まず美術館とは逆方向にある心臓へ向かっていくことに。

正式名称は「心臓音のアーカイブ」。海辺ギリギリまで走ってそこから自転車を置いて歩いて行く。そして現れたのは、ビーチの真横にちょこんと建つシンプルで小さい建物。

中に入ると清潔感たっぷりで病院の受付にいそうなスタッフさんが丁寧に説明してくれた。中にあるのは、心臓音が聞こえる「ハートルーム」と、いろんな人の心臓音を聞くことができる「リスニングルーム」、さらには希望者には自分の心臓音を録音することもできるという。面白い切り口だなぁ。と思いながら、「ハートルーム」へ。

入った瞬間、まさに心臓にドンドン響く重低音と、真っ暗闇の中、部屋の奥から心臓音に合わせて点滅する光だけが見える。さながらナイトクラブのよう。どうやらこの重低音が心臓音のようだ。本当にDJでもいるかのように、不規則だったり大きくなったり小さくなったりして音楽を作っている心臓音。心臓の音をまともに聴くのは初めてだし、ずっと規則的にトントンと打ってるものかと思っていたら、こんなにリズミカルだったりするんだ。アートだ!これを作品にしよう!!

と思ったこのアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーってすごい。 と思いながら、目を閉じてしばしその空間に身を置いてみた。

そろそろ耳もジンジンしてきたので部屋を出てリスニングルームへ。世界各地で録音された色んな人たちの心臓音を聴ける。確かに、愛する人の心臓音をこうして聴けるのはロマンティックかも。。

いやぁ楽しかった心臓。ではいよいよお目当ての豊島美術館に向けていざ坂道を攻めるか。 と、その前にもう一度フェリー乗り場に寄って地図を・・ と近づいてみたら、さっきのおっちゃんが地図を持って外に出てきてくれた。おぉ至れり尽くせり。 勢いよく坂を上り始める。。 そしてあっという間に自転車を押し始める。さすがにもうギアなしの上り坂は体力的にキツかった。笑

距離は遠くなかったけど汗だくになって豊島美術館に到着。棚田に囲まれて、畑の一部かのようにちょこっとだけ白い顔を出している。ここに来ると一気にいかにもアート巡りに来た風の若いおしゃれな人たちや外国人たちがいる。どうやら直島や高松から反対側の家浦港に着く人が多いらしい。そしてほとんどの人が電動自転車に乗ってきてて、なんとも涼しげ。むーん。

美術館の敷地内、美術館を正面にみた外の広場に椅子やらが置かれてて、ここで座ってのんびりできる

ついにこの美術館を自分の目で見れる日が来た。今まで行ったことのある人みんながなんとかその感動を表現しようとしてくれたけど、今いち想像ができない、たぶん誰にもそれをすることができないであろう美術館。写真を見ても凄さが伝わらない美術館。それがここ。 だってここは変化があり、その空間の中で自然との一体感とその変化を楽しむところだったから。

中に入る前にスタッフの人から笑顔で言われた注意事項が印象的だった。

「足元にも美術品がありますので踏まないように気を付けて歩いてくださいね。例えば水滴とかです。」

ということでぜひ実際に行ってみてください。芸術祭の時は相当な数の人たちが来ていたから入場制限があったみたいだけど、今はのんびりしているからむしろ私としては芸術祭以外の時に行くのがお勧め。 だってこの真っ白な空間の中で、心行くまでのんびりして、寝転んで上を眺めたりして焦らされることなく心いくまでじっくり過ごすことができたから。

 

さて気が済むまで存分にここで過ごしたらお腹も空いてきたので、島キッチン・・・ ではなく、モーリー激押しの食堂101号室へ。これまた調べずに来たけどたまたま島キッチンのすぐ隣にあった。古民家の入り口に小さく看板があるだけで、玄関を入ると普通のお家にお邪魔しに来たような雰囲気。

でも中に入ると二部屋ある和室の仕切りを撮って1フロア広々と広がり、その目の前にある中庭が美しい。こりゃあ長居できそうだ。

オーナーさんにランチを注文して、久々に田舎に帰ってきたような空気の中でくつろぐ。田舎の家によくあるような家具や装飾品に、オーナーのセンスで集められた小物や装飾類がうまいことマッチしていて居心地がいい。トイレに行くためにこの部屋から出てみると、他にもいくつか部屋があって意外に広かったことにびっくり。隣の部屋は興味深い本たちが並べられている。

そうして頂いたランチはこちら。お腹に優しい食べ物で、ほっこり。

お会計の時にちょっとだけオーナーさんの時間を頂いてお話を聞かせて頂く。元々大阪出身の方でこちらに移住されたとのこと。ぜひ長く根を張ってこれからの豊島を盛りあげていって頂きたい、モーリーがわざわざフェリーに乗ってまで通う意味がよく分かる、何度でも訪れたくなるカフェでございました。

お腹も膨れて、唐櫃エリアをしばし散策。このエリアにいくつかアート作品があるらしいけど、例によって予習してきてない私はどこに行こうかしばしあてもなっくぶらつく。すると若い女性二人に道を聞かれ、アートは知らないけどフェリー乗り場でもらった地図が彼女たちの持ってたものより優れていたのでそれを見て場所を一緒に探す。「ストームハウス」に行くというお二人。 なんかおもしろそうな名前。と思い、私もそこへ行くことに。

これまた緑の生い茂ったアーチのような入口から古民家へ入ると、すごい雷と雨の音が。なるほど、ストームハウスってそういうことか。

外国人アーティストが日本に来て初めて台風を経験したのがたまたま日本家屋に居たときらしく、その時台風が来て去っていく様子に感動し、今回の作品が生まれたとか。なるほど、ホントに目の付け所によってなんでもアートになるもんだ。おもしろい。 このストームハウスは分かりやすくて単純に楽しめた。ひとしきり台風一過の様子を楽しんだ後、外に出るとスタッフの女の子が「いやーーー、きれいに晴れましたね!」て。ナイス。笑

その後、地図の中にあって気になった「清水霊泉」へ行ってみる。小豆島以上にだっぷだっぷ湧水が出ていた。持ってたペットボトルを空にしてお水を頂く。キモチいいーーー!!すっかりこの場所が気になって座ってのんびりしてると、同じくのんびりしていた家族の子供ちゃんたち二人が寄ってきてくれたので一緒に遊んでみる。 さっきも思ったけど、直島に行った時と違って豊島はもっとのんびりした空気が漂っていて、直島ではアート巡りしてる人同士が道で会って話すってことはなかったのに、豊島では普通に話が始まるし、道ですれ違うと普通にこんにちはーって挨拶したり。芸術祭の時はどうだったか知らないけど、来る人も島のペースになって、交流を楽しめる空気、いいな。 でも出会う人みんな日帰りばかりで、結構忙しくアートだけを巡って去っていくようだったのが残念。これからもっと島に宿泊施設が増えてくれれば、みんなの滞在時間も増えてもっといろんな楽しい可能性も広がってくるんじゃないだろうか。

道中で話かけてくれた島のおじさんから、豊島のことについて色々教えて頂く。おじさんも、豊島にたくさん人が来てくれて嬉しいんだけど、もっとアート以外にも島のいいところをたくさん見て行って欲しい、この島は本当に美しくて豊かな島だから、とおっしゃっていた。瀬戸内海に面した田舎で生まれ育った私にとっての直島や豊島は、身近に当たり前にある田舎風景の中に突如斬新なアートが現れた、というちょっとした違和感はあるんだけど、古いものと新しいものが共存して島にうまく浸透し、持続していってくれればいいな、と切に願います。

オリーブ牛さんも放牧中

散歩してるとまたのども乾いてくるもんで、よっぽど食堂101号室に戻ってお茶しようかと思ったけど、せっかくだから島キッチンものぞいてみることに。

こちらでは、アートとして作られたものと地元の人が一緒に交わってる様子を一番感じることができた。特等席の外のテラスでまったりまったり。こんなテラスがSENにあったら最高だなぁ。

反対側の家浦港周辺も色々ありそうだったので行くかどうか散々悩んだけど、豊島美術館の前にある棚田の絶景を眺めながら一気に港まで下りる、という楽しみのために今回は先へ行かず、豊島美術館前の棚田へ戻り、棚田の間の小道をのんびり歩いてきれいな風景を堪能させてもらった。

目の前は本州

棚田側から豊島美術館を望む

フェリーの時間よりだいぶ早く港に帰ってきて自転車を返しに行くと、誰もいなかったのでそのまま置かせてもらい、船乗り場横の竹小屋で昼寝しながらフェリーを待つ。

フェリー来た。夕方の便だからか行きより人も多い。。 と、見たことのある人がフェリーを港に寄せている。よく見ると、レンタサイクル屋のおっちゃんだった。おっちゃん、なんでもこなすんやね。笑 でも最後に直接御礼言えてよかった。

おっちゃんに始まり、おっちゃんで終わった豊島旅だったけど、島の人の温かさと自然の美しさとアートの楽しさと。心の底から完全に力を抜ききってリラックス&リフレッシュさせてもらえた島だった。やっぱり来て良かった。

 

 

 

 


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